『龍が哭く』河井継之助 ✨小林虎三郎
「……寅次郎が生きておればなあ、
一度継さと会わせて話をさせてみたかったぞ」
寅次郎とは、吉田松陰のことだ。
「松陰か。俺も話してみたかったが」
死んでしまったものは仕方がない。
「なあ、継さ。
俺たちは夢を見たんだ。
俺と寅次郎は、かつて同じ夢を見た。
列強に肩を並べて立つ日本の姿をなあ。そして約束したのだ。
寅次郎が革命の事業を成し、俺が後進を引き受けて明日の日本を背負う人材を育てるとな。
だのに、寅次郎は処刑され、この俺は謹慎だ。
だが、俺は寅次郎との約束を果たすつもりだ。決して諦めんぞ」
うむ、と継之助は頷いた。
「互いに己の納得いくまで、己の仕事をやり遂げようじゃないか」
「食えないからこそ、学校を建てて人材を育てるのだ」
「教育こそ人材を育て、国やまちの繁栄の基となる」
贈られた百俵の米を食わずに、売り。
学校を作り、後進の育成に取り組む。
その学校から、山本五十六等、後の日本発展を支える人材が育っている。
『龍が哭く』のこのやり取りの冒頭。
こんなくだりも描かれています。
こちらを紹介して、終わろうと思います。そして、教育の重要性を改めて感じます。
その教育とは、高き「志」のある本物の教育。その「志」には、やはり師弟の絆があるのだと感じてやまない。
虎三郎は処罰されるまでは佐久間象山門下で吉田松陰と並んで「二虎」と称され、将来を期待された英才だ。
ここにも佐久間象山という師があり、弟子がいる。
2019 3 28 木曜日 22:48