土方歳三
『歳三 往きてまた』
秋山香乃 著
文芸社
2002年 4月15日 初版
著者プロフィールより
新撰組の藤堂平助を主人公とした作品があるが、本作品がデビュー処女作になる。
「この混乱した京を収めるのは並みではできぬ。
だが、ここは王城ぞ。
やらねばならぬ。
名ばかりの天誅を振りかざす血に飢えた暗殺者たちの跋扈する都であってはならぬのだ。
不本意にも無法地帯と呼ばれる京に、治安をもたらすのは予の使命である。
予の力になってくれるな」
容保の言葉は、その場に居合わせた全ての男たちの胴をふるわせた。
彼らの心は共鳴した。
容保は更に続ける。
「心強いぞ。予は百万の味方を得た」
このとき、土方は迂闊にも感動したのだ。
容保の持つ使命にも、使命に対する悲壮なまでの決意にも、共感できて胸が熱い。
このひたむきな貴人に必要とされたことが、これほど自分を揺さぶるとは、この瞬間まで思いもしなかった。
そして、余りに生真面目すぎて陰謀渦巻く京で上手く立ち回ることが出来ない不器用な会津が、帝と幕府への忠義心ゆえに踏み込んでしまった滅びの道を、彼もまた共に突き進んでいくことになる。
あれから四年半。
「迂闊にも感動したのだ」と描いた筆者の心。
ピリピリとした時代状況、緊張感やひしひしと伝わってくる筆致。
冒頭より、大きな期待をもって、読み進んでいきたい。
と、同時に!
「藤堂平助」
彼を取り上げた作品も読まねばと感じさせられる。
2019 3 7 木曜日 20:54